伝えたい。あなたに。
消灯時間を経て、静まり返った院内に、止まったはずの涙が溢れてきた。



きてくれなかった。もう、こんな哀れな自分を慰めてくれる人なんていない。




はなはどうしてるだろうか、元気にしてるだろうか。



久しぶりに、スマホの電源を入れてみる。



母からメッセージが来ていた。



ゆうか、はなのことなんだけど、あまり良くなくて太田先生が見てくれてる。今月もつかわからないって。



そんな、そんなにひどいの?



それなら私の命に変えてでも生きて欲しい。



そう思った。



私が痛みに耐えるから、苦しみに耐えるから。



はなの命を守って欲しい。



たったひとりの、大好きな家族だから。



両親がほとんど家にいない私にとって、はなは唯一のそばにいる家族だった。



長く一緒にいなくても、保護してから数日で、お互いに心を開いた。



そんな存在までも、奪われてしまうの?



自分が生きる意味を、



答えもないのに



探してしまう。



まただ。



また。同じような感触に襲われる。



今度はさっきよりも呼吸が苦しい。



胸を強く、強く握りしめる。



今度はさっきよりも強く。



現実のもやもやを胸から取り払うように。
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