絶望エモーション
Ⅵ 干潟の楽園



『沙都子、そろそろ母さんに顔を見せてやってほしい。
母さんはおまえに本当に会いたがっているんだ。

次の土日のどちらかはどうだろう。俺も父さんも家にいる予定だ。
沙都子が来るのを待っているよ』



兄の修平からこんなメールがきた。


最近、連絡が頻繁だ。
私はメールを返そうとして、一度携帯をしまった。

断りの連絡は早くすべきと思いながら気鬱だった。

本当は平日に休みをとって、母に顔を見せに行こうかと思っていた。
正月に帰れない詫び入れだけど、兄がいない日の方が都合がいい。
しかし、年末で繁忙期のため、なかなか平日に有休をとりづらく、今日まで来てしまった。


学芸大学駅についた時刻は20時。今日は順調に仕事を終え、普段より早めに帰ることができた。
葦原くんの部屋には昨晩泊まりだった。さすがに二晩連続というのは滅多にない。

改札を出ると着信が入っていることに気づく。

兄の名がディスプレイに表示され、ぞっとした。

しかし、気付いてしまったものは仕方ない。週末の断りもかねて出ることにする。
< 145 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop