絶望エモーション
「あなたが鎌田部長を好きだって、俺が噂を流したらどうなると思います?」


私はぎょっとして固まった。何を言い出したのだろう、この子は。


「同性の仲良しの後輩との噂。鎌田部長の婚約者はどう思いますかね。妻になる人のレズビアン疑惑って見過ごせなくないですか?自分とは偽装結婚で、将来セックスレスになるかもしれないなんて心配したりして」


「葦原くん、その冗談すごく感じ悪いよ」


私が必至に会話を遮ろうとしても、葦原くんはやめない。どころか、パーテーションから身体を離しにやりと微笑む。


「案外、結婚が破談になったりして」


「葦原くんっ!」


思わず声を荒げた私に、葦原くんは茶化すように言う。


「やだなぁ、落ち着いてください。九重さんでもそんな大きな声出すんだ。鎌田部長のこと、本当に好きで大事なんですね」


嫌な後輩にこんな言われ方をされると、私の秘めた恋心が一気に下種なものに思えた。
無性に悔しい。
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