絶望エモーション
Ⅶ 情動



年明けから、私には大きな仕事が入った。
ロジスティクス系大企業から、社内システム構築の依頼があったのだ。
私は他部署で編成されたチームに入り、連日仕事漬けの日々が始まった。

ちょうど、葦原くんも与野と合同で取り組んでいた案件が佳境のようで、忙しそうだ。
平日はお互い日付が変わってから帰宅したり、下手すると始発が動く時間まで仕事なんてこともある。

身体を重ねる機会が減ったのは、今の私たちにはいいことなのかもしれない。
彼は私を征服するため抱くのをためらい、私は彼への複雑な思慕に苦しんでいる。
お互い、仕事は逃避になる。

だけど、仕事が一段落したとき、私はふたりの関係を見直す勇気が湧くだろうか。

彼の歪んだ欲求を叶えるため、そばに居続けることはできる。
しかし、彼は、変わりつつある。

彼は自分の在り方に疑問を感じている。皮肉なことに私を通じて。
魅力的にふるまい、他人を自分の支配下に置く。疑いもなかった彼の生き方に、彼自身が拒絶反応を感じているようだ。
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