絶望エモーション
「優秀な弁護士さんがついてくれたの。表向きは裁判で争うけれど、司法取引っていうのかしら。とにかく修平を無罪にできるよう計らってくれているのよ。修平の大学時代の知り合いみたいなんだけど、持つべきものは友達だわ。今回も命は助かったんだし、あの子が罪に問われるようなことにならなければ、それでいいのよ」
母は無邪気に安堵しているが、私には現実味のない話に思えた。
司法取引だなんてそれらしい聞きかじった言葉を使っているけれど、実際、弁護士がそんな仕事を請け負うとしたら法なんて無いも同然じゃないか。
それに、裁判で争うということは、起訴自体は取り下げにならない。無罪を目指すつもりなのだろうか。
あまりに安易な話。
誰に吹き込まれたのだろう。根拠のない楽観視を避けるべきと母に忠告しようかと考え、はたと止まった。
兄の失脚。
差し伸べられた救いの手。
自殺未遂。
この瞬間、今までバラバラになっていたピースがひとつの形になった。
気味悪いほどするするとまとまっていく考えに、私は戦慄し、トクトクと心臓が早鐘を打ち出すのを感じる。
母は無邪気に安堵しているが、私には現実味のない話に思えた。
司法取引だなんてそれらしい聞きかじった言葉を使っているけれど、実際、弁護士がそんな仕事を請け負うとしたら法なんて無いも同然じゃないか。
それに、裁判で争うということは、起訴自体は取り下げにならない。無罪を目指すつもりなのだろうか。
あまりに安易な話。
誰に吹き込まれたのだろう。根拠のない楽観視を避けるべきと母に忠告しようかと考え、はたと止まった。
兄の失脚。
差し伸べられた救いの手。
自殺未遂。
この瞬間、今までバラバラになっていたピースがひとつの形になった。
気味悪いほどするするとまとまっていく考えに、私は戦慄し、トクトクと心臓が早鐘を打ち出すのを感じる。