絶望エモーション
終
いくつかの季節が通り過ぎ、私の生活もだいぶ変わった。
職場や住環境も変化し、私は来月34歳の誕生日を迎える。
代々木の雑居ビルに彼がいるらしいという情報は、先日未來さんのご主人の敬三さんからもたらされた。
何をしているかと聞けば、NPO法人の代表だと言うから驚いた。
敬三さんが言うには、彼はあの後アジア諸国で仕事を重ね、カンボジアで障害者支援のNPO法人を立ち上げたらしい。
地雷で身体や心に傷が残る人たちの支援だという。
それが、今の葦原五弦の仕事のようだ。
日差しが眩しい初夏のある日。
私はかねてから考えていたように、代々木のその場所を訪れてみることにした。
代々木公園の近く、新宿駅方向に彼の団体の本拠地はあった。
ものすごく古い雑居ビルだ。一階が牛丼店、二階がアダルトショップ、三階に目的地。
彼が3年前に過ごしていた世界観とあまりに違って、少し面白い。