絶望エモーション
お父さんの部屋は、普段あんまりいないから片付いていた。舞う埃がないのは、定期的にお母さんが掃除しているから。
私はソファでお父さんのひざに乗っかり、お父さんの携帯の画像を見せてもらっている。
お父さんが飛び回っている世界のあちこちの写真。
風景や人、見つけた面白いものなんか。


「清子、重くなった」


お父さんが後ろでぼやく。私はわざとおしりで何度かジャンプした。


「女子に失礼だ!」


「はい、スミマセン」


私は満足し、お父さんを椅子に画像を見る作業に戻る。
お父さんはどんな景色を見ているのか。どんなものに心がぎゅっとなるのか。
私はそれを知りたい。
いつか私も連れてってくれるって約束は、お母さんには内緒だ。


「清子、おやつは?」


「学童で食べた。でも、お腹空いた」


「さっき買ったサンドイッチならあるけど。……夕飯、どうしようかな」


私はお父さんのひざから降り、出してもらったコンビニのサンドイッチにかぶりつく。
レタスとハムのサンドイッチはぬるかったけれど、美味しい。そしてちょっと足りない。


「お母さん、帰ってくるの7時だよ」


私とお父さんの時間はあと1時間半。
さて、何をしましょうかね、お父さん。
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