絶望エモーション
お母さんは今から8年前に、ひとりで私を産んだ。

未來おばちゃんと敬三おじちゃんの助けは借りたみたいだし、たまに会うおじいちゃんおばあちゃんにはマンションを買うお金をちょこっと借りたなんて言ってた。
だから、100パー、ひとりってわけじゃないけど。

まあ、お父さんはいないって意味でね。

シングルマザーって言うんだ、うちのお母さんみたいな生き方。

お母さんは私を養うために、毎日一生懸命働いてる。
会社で朝から夕方まで働いて、私のごはんを作って、他にもおうちのことやって。
たまにお父さんの面倒も見て。

すごいよね、えらいよ。

お母さんは私の一番大事な人。
そして、そのお母さんが一番大事なのは私とお父さんなんだと思う。


お父さんと初めて会ったのは、たぶん3歳くらい。
何度か会ううち、気付いたらマンションの隣の部屋に引っ越してきてた。

お母さんはお父さんのことを“葦原のおじさん”って呼ぶ。
だから、私もそう呼ぶ。

でも、保育園の頃からわかってた。
私のお父さんは“葦原のおじさん”だって。
なんとなく、わかってた。
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