From..
俺はゆっくり、音がしないように体育館の扉を開いた。

「次は転入生挨拶です」

司会を務めている先生がそう告げた。どうやらあの子は間に合ったみたいだな。

俺は自分のクラスの列を探し、こっそりと入り込んだ。

「おい!おせーよ」

そう小声で話しかけて来たのは雅也だ。

「ちょっとごたごたに巻き込まれちゃってな」

「ふーん…てか翔は転校生って女と男どっちだと思う?」

「女だよ」

「何で分かるんだよ」

即答した俺に、雅也は面食らったみたいだった。

「さっき会ったから」

「通学途中に転校生に会うなんてベタな展開がある訳無いじゃん!!漫画の読みすぎだって!」

雅也は大きな声で笑い始めた。

「昨日のラブレターといい…お前大丈夫か?」

「俺はいつも通りだよ」

「いつも通りじゃ駄目だよ。おまえいつも変だからな!」

「うるせぇ!!」

「静かにしろ!!」

担任にそう言われ俺達は口をつぐんだ。

「ほら壇上を見ろ」

担任にそう言われ壇上を見ると、藤堂さんが今まさに言葉を発しようとしていた。

「S県のY高校から転校して来た藤堂美紀です。よろしくお願いします」

そういうとペコリと藤堂さんはお辞儀をした。

「これにて始業式を終了させていただきます」

「本当に女だったな…しかも可愛いし…」

雅也が呆然と呟く声が耳に残った。
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