From..
2章 Wデート

お誘い

「ふわぁ……」

俺は大きなあくびを一つ漏らす。

美紀が転校してから二週間が過ぎていた。持ち前のルックスと天然な性格の為か、上手くクラスに馴染めているようだ。俺の視線も自然に美紀にいく。

「何だよ翔、美紀に浮気かよ?」

いつの間に来ていたのか、雅也が俺の前にいた。

「浮気も何も……」

「いいと思うぜ、俺は。百合菜より可愛いし」

雅也はそう呟いて、自らも熱い視線を美紀に送っていた。

「あのなぁ、可愛いから好きってのは子供の理由だろ?」

「あほ、恋愛の『れ』の字も知らないお前が何を言うか」

雅也は俺の反論をぴしゃりと打ち切った。そして何かを思い付いたのか、顔がニヤついて来た。

「……じゃあ翔は何で百合菜を好きになったのかなぁ?」

「それは……」

理由は俺の中でははっきりしている。だけど、コイツに知られたら何かと話のネタにされそうで嫌だった。

ガラガラ。

「じゃあホームルーム始めるから席に着け」

その時、都合よく先生が来てくれた。雅也は小さく舌打ちをしてから、渋々自分の席へと戻っていった。

百合菜ちゃんを好きになった理由……か。
< 17 / 387 >

この作品をシェア

pagetop