From..

料理を作っているのは、どうやら百合菜ちゃんだった。エプロン姿が似合いすぎている。

百合菜ちゃんの手づくりオムライスかあ……。

『はい翔君、あーんして？』

『いやー照れるよ……』

『デザートは私だよ？』

そんな脳内妄想を繰り広げている間に料理は出来上がったようだ。

出来立てホヤホヤのオムライスが美味しそうな香りを漂わせながら、雅也によって運ばれてくる。

「お待たせしました。こちらオムライスとメロンソーダでございます」

丁寧に俺の前に皿を置く雅也。接客態度は文句の付けようが無い。

「いただきます」

俺はオムライスを口に運んだ。その瞬間、卵がふわっと口の中でとろける。

「美味い！」

俺は先程、お菓子をたらふく食べていたことも忘れてオムライスに食いついた。

１０分程で俺は平らげてしまった。

そのタイミングを計ってか雅也が机に近づく。

「お客様。食後のデザートはいかがですか？」

「……じゃあコーヒーゼリーを頼むよ」

「かしこまりました」

本当に素晴らしい喫茶店だ。これなら中々の来客を迎えるだろう。

俺は運ばれて来たコーヒーゼリーを上機嫌に口に運んでいた。

「ご馳走様。いやーいいんじゃないか？この喫茶店？」

俺は素直に自分の感想を述べた。

「まだでございます。お客様」

「まだサービスがあるの！？」

本当にすごい喫茶店だ。

「お会計がまだでございます」

「は…？」

「メロンソーダ150円、オムライス350円、コーヒーゼリー200円で700円になります」

「おい！クラスの仲間から金とんのかよ？」

「仲間…？あんたは客として招かれただけよ。早くお金出しなさい」

いつの間にか素の口調に戻っていた静香に俺の必死の抗議も届かなかった。

「はいこれ、レシート。ありがとうございましたー」

静香手書きのレシートが石になっている俺の手に無理矢理握らされた。

あんまりな仕打ちだ…。