From..
皆は救急車を呼んで、紫音に付き添って行った。

二人きりとなった空間で雅也は重々しく口を開いた。

「まずな…紫音のやつ…原因不明の病気を抱えててな、実は4月くらいから自分の余命が残り少ないと分かってて……雛菊病院に入院してたんだ」

俺は4月に紫音と久しぶりに再会したことを思い出した。

だからあの時……紫音のやつ元気なかったんだ。

「その入院した病室ってのは……おじいちゃんと一緒の病室だったんだ」

「じゃあ……あの時俺が聞いた『余命六ヶ月』っていうのはおじいちゃんじゃなくて紫音のことだったのか……」

それで初めからおじいちゃんが紫音のことを知っていたのも頷ける。

「俺も紫音に何かいい思い出作れないかな?って思ってさ……映画撮影を企画したんだ……。入院しててあいつ学校行けないしな……」

「でも体育祭の練習に紫音は毎日付き合ってくれてたよ……?」

そう。あの時の地獄の二週間、紫音は毎日俺を見てくれていた。入院してるはずなのに……。

「……あいつは翔のためには何だってやるさ」

「……それどういう意味だよ?」

俺は雅也に突っ掛かる。

「自分で確かめろ。聞きたいことはそれで終わりか?それなら早く紫音の具合を見に……」

「待って!聞きたいことが二つある」

「……何だ?」

「治らないのか…紫音は…治らないのかよ!?」

「紫音の中の白血球中のリンパ球が関係してる病気だ……。原因不明で治療法も確立してないんだ……」

雅也の握る拳が震えている。

悔しいんだ……雅也も。
幼なじみの為に何も出来ない自分が……。

「皆は知ってたのか?何で俺に隠してた……?」

「皆は知ってる。翔に隠してた理由は……紫音に頼まれていたから」

「紫音に……?何で?」

「その答えは本人に聞け 早く行こうぜ」

雅也の言葉に頷いて文化祭の後片付けも梅雨知らず、全速力で雛菊病院に向かった。
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