From..
「……紫音の容態は!」

俺と雅也はここが病院であることも忘れて息も絶え絶えに大声で尋ねた。

「大丈夫。命に別状はないわ……」

早苗さんの言葉にホッと胸を撫で下ろす。

「だけど……もう長くもないわ…。持って一ヶ月。正直な話……いつ亡くなってもおかしくは……」

「紫音……そんな……」

「皆も時間が空いたらちょくちょく来てあげてね……?」

早苗さんは気遣ってか病室を出ていった。

「紫音さん……。何で紫音さんがこんな目に……」

桜花が涙を流す。それにつられて皆からも涙が湧き出てきた。

あぁ神様…。紫音の為にこんなにも多くの人が涙を流せるんです。

なぜ…紫音にこんな過酷な運命を背負わせるのですか……?

それから皆は一言も言葉を発さなかった。ただただ眠っている紫音をぼんやりと眺めていた。

「……面会終了時刻になりました」

気まずそうに早苗さんは俺達に告げる。

俺達は後ろ髪を引かれる思いはであったが、病室を後にした。
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