From..
「最近……寝るのがたまらなく怖いの……。目を閉じたら二度と起きれないんじゃないかって……」

何て俺は馬鹿なんだ…?
紫音は毎日毎日、死の恐怖と戦っていた。そんな紫音に俺は気付いてやれなかった。

自分の不甲斐なさに腹がたつ。

「私残り生きれて一週間でしょ?だから……物凄く不安で……」

俺はそっとベッドの上の紫音を抱きしめる。

「一人で抱え込むなよ。俺が全部受け止める。笑うときは一緒に笑って、泣くときは一緒に泣いて辛いときだって……俺に当たってもいいからさ、一人で抱え込むのだけはやめてくれ……」

「……翔。あったかい」

ガラガラ。病室の扉が突然開いた。

「あらあら。私邪魔者だったかしら?」

入って来たのは紫音のお母さんだ。俺は慌てて紫音から離れる。

「じゃあ俺はこれで失礼します」

「別にゆっくりしてっていいのよ?」

お母さんのご好意は嬉しいが、家族水入らずの時間も大切だと思う。

「じゃあな紫音。また来るよ?」

「いつもありがとう」

その笑顔が俺の見る紫音の最後の笑顔になった。
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