From..
「美紀ちゃん、優しくて天然入ってて……いいよなぁ」

渡は、ため息と一緒にそのセリフを吐き出す。

「まぁ……美紀は天然だよな。俺も美紀には苦い思い出があるからな…」

「何だよそれ?詳しく教えろよ」

渡がしつこく聞いて来たので、俺は美紀と学校に行く途中でぶつかって、引きずられたことを話した。

「だから美紀ちゃんは翔なんかと仲がいいのか。良かった。俺はてっきり美紀ちゃんが翔のことを好きだと勘違いしちゃってたよ!!」

「美紀は友達だよ。それ以上でもそれ以下でもない……」

「じゃあ私は?」

誰だ?俺と渡は同時に声をした方を見る。

「……君かっこいいね。翔なんかより全然」

そいつは渡を上から下までじっくり眺めた。

渡は突然の女の来訪にたじたじだ。

「何してんだよ?紫音。勝手に上がってくるのはやめろよ」

「何?翔の分際で私に逆らうっていうの?」

紫音の殺気を感じ取った俺はそれ以上追求しなかった。

理由は簡単。俺はもっと長生きしたかったからだ。
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