From..
「美紀、痛いから!離して!」

「……すみません」

屋上で俺はようやく解放された。新品の服も、紫音に整えてもらった髪もグシャグシャだ。

「私、渡さんがあんなに心が狭いとは思ってませんでした」

確かにおかしい。渡は自分勝手だが、美紀のことになると、ちゃんと美紀のことを優先に考えたはずだ。

「美紀、渡はそんな奴じゃない。きっと、何か理由が……」

「あんな人、もう知りません」

「……美紀!!」

俺は美紀を一喝した。あまりの大声に周りにいた人達も驚いてこっちを見ていた。

「渡はそんな奴じゃない。俺の友達のこと悪く言うなよ」

「でも……」

「でもじゃない。俺は美紀や渡、百合菜ちゃん、皆の友達だ。悪く言われれば怒るのは当たり前だろ」

「……すみません」

美紀が申し訳なさそうに謝る。だけど、俺はやりすぎたことに気付く。

「わ、私……許せなくて。翔さんが一生懸命に考えてくれたコースを蔑ろにする渡さんが……」

美紀の大きな目が次第に潤み始める。

「み、美紀!落ち着いて、とりあえず座ろうか!」

俺は美紀を連れてベンチに座った。そしてゆっくりと深呼吸させた。

「……落ち着いたか?」

「少し……」

俺は美紀の背中を摩ってやった。そして摩りながら、渡のことを考えていた。どうしても渡の行動が腑に落ちなかった。
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