From..
「ふぅ……」

俺が美紀の背中を摩り始めてから二分くらい経った。美紀は大分落ち着いて来たようだった。

「せっかくのWデートなのに、私が皆の空気をぶち壊しにしちゃいましたね」

「美紀……?」

「謝りにいかないと、ですね」

ばつが悪そうに舌を出す美紀。こりゃ、落ちるのは渡だけじゃないな……。

「じゃあ、行く?」

俺が美紀を立たせようとした時だった。屋上の扉が大きく開かれた。

「……どうやらこっちから向かう必要はなかったみたいだな」

俺はフッと小さく笑った。前には、息を切らしている渡と百合菜ちゃんの姿があった。きっと、ずっと走って来たんだろう。二人とも疲れ切っていた。そんな中、先に口を開いたのは渡だった。

「美紀ちゃん、さっきはゴメン。だけど……これ、渡したかったんだ」

渡はそう言って、美紀に青いくまのぬいぐるみを投げた。

「渡さん……?」

美紀は慌ててそれをキャッチする。

「美紀、渡君ね。それ取るのに相当苦労したんだよ?」

「ゆ、百合菜ちゃん!それは内緒だって……」

渡の顔は真っ赤だった。俺は美紀の持つぬいぐるみを見る。一体、そのぬいぐるみに何の意味があるんだ?
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