From..
「美紀、あのね。そのぬいぐるみはとても人気があってね。すぐに取られちゃうのよ」

百合菜ちゃんが、はしゃいでいる渡を無視して話を続ける。

「そのぬいぐるみには、意味があるんだよ?ね、渡君?」

「……ああ、そうだけど」

「渡さん、何ですか?」

美紀が渡をじっと見つめる。流石の渡もこの攻撃には耐えられなかった。散々、渋っていたのだが終いには口を開いた。

「……そのぬいぐるみを持ってると幸せになれるって、掲示板に書き込みがあって、その……嘘かもしれないけど、一様……」

渡が全部言い切る前に、美紀は渡に抱き着いた。

「み、美紀ちゃん!?」

「渡さん。本当にありがとうございます……。私、私……」

渡は困ったようにしていたが、やかでゆっくりと美紀の髪を撫で始めた。

「渡さん、言ってましたよね?確か、このぬいぐるみを持ってれば幸せになれるって……」

「そ、そうだけど……そんなの根拠もない噂……」

「ううん。私、今、すっごく幸せです。ありがとう、渡さん」

な、何だか見てるこっちが恥ずかしくなって来た。それは百合菜ちゃんも同じだったようだ。

「し、翔君。私達はお邪魔みたいだね?」

百合菜ちゃんは穏やかに渡と美紀を見ている。

「第二ヶ条、プレゼントで二人の心を縮めるべし」

「翔君?」

「何でもないよ、行こうか」

俺達は美紀と渡の邪魔をしないように、こっそり屋上を後にした。
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