From..
空から冷たい雫が落ちて来た。

「雨か……」

百合菜ちゃん、大丈夫かな? こんな時にでも百合菜ちゃんのことを考えてしまう自分を嘲笑った。

だが、雨は次第に勢いを増してくる。たまらず俺は雛菊公園内のタコのモニュメントの中に逃げ込んだ。

「びしょびしょだな…」

その時、携帯が勢いよく振動した。ディスプレイに浮かぶのは、君の名前。

着信あり 百合菜ちゃん

いつもの俺だったら迷わず取った。だけど今は……。俺は電話を切って携帯の電源も落とした。

ただ、一人になりたかった。俺は、目の辺りに雫が流れるのを感じた。

泣いてるのか、俺……。

ダッセェな……。

だけど、不思議と涙は止まってはくれなかった。

やっぱ、恋ってのは卑怯だ。恋してこんなに悲しいのに、とっても辛いのに……。

嫌いになれないんだ。
大好きだから……。

どうすればいいんだよ。

俺の鳴咽は、しばらくモニュメント内に響き渡っていた。
< 45 / 387 >

この作品をシェア

pagetop