From..
「ん……」

俺は目を開けた。……泣いてるうちに寝ちゃったみたいだ。雨は通り雨だったのか、空には太陽の姿があった。

「起きた?」

「え?」

俺は思わず声のした方に振り返る。そして、目を疑った。

「おはよう、翔君」

そこには、俺が大好きな君がいた。

「な……何で?」

「あのさ、雨が降って来たからどっかで雨宿りしようって思ったら、雛菊公園のタコが思い浮かんでさ」

考えてたことは一緒か。

「ごめん……」

俺達の声が綺麗に重なる。俺と百合菜ちゃんは思わず顔を見合わせる。

そして、二人で思い切り笑った。腹の底から大きな声で笑った。そして、俺から頭を下げた。

「百合菜ちゃん、俺が馬鹿だったよ……。誰にも話したくないことだってあるもんね」

「ううん……。ちゃんと言わなかった私も悪いんだと思う。だけど、待ってて?いつか、必ず言うからさ」

そう言ってニコって笑ってくれた百合菜ちゃん。やっぱり、俺が好きなのは君なんだって心から思えるよ。

「てか、百合菜ちゃんびしょ濡れじゃん……」

「翔君だって……」

男の場合はいいんだけど、女子の場合は服が透けてしまう。俺は、ちょっと濡れてる上着を百合菜ちゃんにかけた。

「話しにくくなっちゃうから、羽織ってて?」

俺が上着を百合菜ちゃんに投げると、ようやく百合菜ちゃんは自分の服の状態を知ったらしく慌てて上着を羽織った。

「……冷たいけど、温かいね?」

それから日が沈むまで俺は、百合菜ちゃんと話すわけでもなく、ただ一緒にいた。

それだけで、幸せだった。
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