From..

何で百合菜ちゃんは俺から目を逸らすんだろう。俺はずっとそのことについて考えていた。

『Ｗデートの相手、翔君がいいって言ったの私なんだよ？』

あの言葉は妄想世界での話だったのだろうか？

「なーにしょげた顔してんのよ。失恋？」

「え！？紫音！！」

後ろから声をかけて来たのは紫音だった。俺は慌てて時間を確認した。１０時３０分……。学校が終わるには早過ぎる時間だ。

「今日は検査があるから早引きしたんだ」

俺の顔から疑問の色を汲み取ったのか、理由を聞く前に紫音が答えを教えてくれた。だけど、紫音は何故か曇り顔だった。

「検査って何の検査？」

俺は思った疑問をぶつけてみた。

「何だと思う？」

紫音は 俺を試すかのように尋ねて来た。

「…おめでた？」

俺は冗談のつもりだった。しかし、紫音の顔は次第に赤身を帯びていく。

「そうだよ…。翔との子でもう二ヶ月になるんだよ。今日は定期診断！」

「え……？」

俺はうろたえる。俺が紫音にそういうことをしたことは一切ない。だけど今も紫音は頬を赤らめながらお腹をさすっている。しばらくしてから、紫音は笑い出した。

「あはは。冗談だよ…翔は動揺しすぎだよ。私は翔の脳内でしか体の関係持ってないよ」

良かった！冗談か…。でも一つだけ引っ掛かる言葉があったぞ。

「紫音。脳内で体の関係もったことあるって？」

「翔の妄想では私たち体の関係持ってるんでしょ ？最低だよ」

も…妄想！？確かに二、三回は…って違う違う！

「阿保か。俺はそんなことしねーよ！！」

「どーだか！！」

そんな軽口を叩き合いながら俺らは帰った。紫音と話していると、憂鬱なんて吹き飛ばされるんだな。俺は、帰りに紫音に会えたことを素直に喜んだ。