From..
あの子は無事に帰ったのだろうか…?脇目も降らず駆け出したからな……。

さて…これからどうしようか。カッコつけたが実は折り畳みなど持っていない。置き傘もあの子に貸した一本しかない。

傘を盗もうにも同じ考えの奴が多数いるからか一本もない。まあ、盗むつもりなんてないんだけどさ。

しょうがない。濡れて帰るとするか。俺は諦めて再び校舎から出て、軽く準備運動してから走り出した。

「ねぇ!!!」

校門付近での急な声に俺は前につんのめる姿勢になる。

俺は声の主を探す。どうやらさっきのあの子のようだった。

「折り畳み傘は?」

その子はどこか怒ったような顔をしていた。

「い、いやぁ……。さっき犬に持ってかれて……」

「ぷっ……」

その娘は笑いを噛み殺しているようだった。

「な…なんだよ…」

「嘘つき!でも、ありがとう」

その娘は笑顔でそういった後に……頬を赤く染めながら俺の方へと傘を傾けた。

「えっ……」

「一緒に入ろう?」

そして満面の笑顔。1R 32秒KO。その笑顔は反則だろ…。

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