From..
「まあ立ち話も何だし部屋にお入り?」

母さんは ニヤけた顔を浮かべながら言った。

「お気遣いなく…すぐにおいとましますので」

俺は 百合菜ちゃんのその言葉を聞いて少しがっかりした。男とは単純な生き物で、俺の頭の中にはこんな計算が浮かんでいた。

『もうすっかり暗くなっちゃった……ねぇ、翔君。今日、泊まっていい?』

『いいけど……俺ベット一つしかないよ?』

『一緒に……寝よ?』

くー、たまらん!ってオヤジか、俺は……。

「翔くん…?大丈夫?」

百合菜ちゃんは 俺のニヤけ顔を心配したのかそう尋ねて来た。

「だ…大丈夫だよ!!それより何で来たの?」

ニヤけた理由を追求される前に別の話題に変えようとしたが、裏目に出てしまった。

「め…迷惑だったかな」

百合菜ちゃんの顔が次第に曇っていく。

「ううん…迷惑じゃないよ…」

何となく気まずい雰囲気が玄関を支配した。それを察してか、母さんがフォローしてくれた。

「晩ご飯食べてく?」

「え?」

百合菜ちゃんは驚いていた。俺はドキドキしていた。うん、と言ってくれないかな……。
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