From..
それから俺に授業の記憶はなかった。心にぽっかり穴が開いてしまったような気がしていた。

「翔。帰ろうぜ」

「ごめん……一人になりたいんだ」

俺を気遣ってか渡と雅也はその理由を追究して来なかった。俺は本当に気の利く友人を持ったものだ。俺はそんなことを思いながら下駄箱の靴に手をかけた。

カサッという音と共に手紙が落ちて来た。俺は何気なくその手紙を読んでみた。

『若葉 翔先輩へ。始業式であなたを見かけてからずっと好きでした。良かったら私と付き合ってください。明日の朝に1Cでの返事お待ちしております。水城 桜花』

ら……ラブレター?
こんな俺にラブレターを出す人なんていたのか。

水城 桜花……。記憶を辿ったがやはり俺には心当たりのない名前だった。

俺はふと宛先のないラブレターのことを思い出した。だけど、あの字体と水城 桜花の字体は合致しない。

「あのラブレター、誰がくれたのかな?」

疑問は深まる一方だった。
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