僕から、キミへ













ICUで眠るカイくんを思い出し、あたしは泣きだした。
 
泣いた理由を知っているかわからないけど、担当医が優しく肩を叩いてくれた。



「カイくん、俺も知っていたけどな。
病室で独り、今までずっといたんだぞ?

笑顔も全然なくて、ずっと病室の窓から見える大通りを歩く学生を見て、辛そうにしていたんだ」


 

あたしに会う前のカイくんの姿なんて知らなかったから。
 
あたしは黙って泣きながら、担当医の話を聞いた。





「だけどハルナちゃんに会って、カイくんに笑顔が戻ったって、医者や看護師の中で話題になったんだぞ?

ハルナちゃんが、閉ざされていたカイくんの心の鍵を開いたんだよ」


 


どこの青春小説のワンフレーズですか、先生。
 
そう思ったけど、あたしは何も言わないで、ただひたすら泣いた。
 





涙が、止まってくれない。







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