僕から、キミへ










物心ついた時から僕は、普通の人よりも体が弱かった。






入退院を何度も繰り返し、学校へ行ったことも片方の指で足りるほど少なかった。


少し院内を歩いただけで苦しくなってうずくまり、
何週間も意識を失うことも多くあり、スポーツと言うスポーツは経験がなく、
見慣れた人たちと空間の中で、日々を過ごしてきた。





僕が独りで使う病室からは、車や人が行き交う大通りが見える。

そこは通学路らしく、ランドセルを背負った小学生から、制服姿の中学生か高校生まで、多くの人が通って行く。




僕も健康だったなら、ああやって友達と笑い合いながら、
元気に走りまわれたんだろうな。

そう考えるだけで、僕は自分自身が何故こんな病弱に生まれて来てしまったのか、
泣きたくなって来てしまう。

 



でも、僕を産んで育ててくれた両親には、何の罪もない。




僕の両親は職場で出会い結婚したものの、数年は子どもが出来なかった。


子ども好きの両親にとって、ようやく新しい命が宿った時、
身内を大勢家に呼んでパーティーをしたというほど、僕は望まれた存在だった。

 



だけど僕が産まれてすぐ、心臓や呼吸器系に異変が見つかって。

それから今まで、僕はずっと病院で過ごしてきた。

 


仕事が忙しいはずなのに、両親は土日には欠かさず会いに来てくれる。



本当は僕の入院費や何度も行う手術費を稼ぐのに必死になって働いているはずなのに、
両親は疲れを見せないで、僕に笑いかけてくれる。

病室に来る度に「何が欲しい?」と聞いてくれ、
僕が欲しいと言う度、次来る時にはちゃんと欲しいと頼んだものを持ってきてくれる。
 
優しい両親は、僕にとって大事な存在だった。








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