僕から、キミへ
担当医が出て行き、僕は天井をぼっと見つめた。
そして、意識を失う前のことを思い出す。
独りだった病室。
大通りから見える、憧れの景色。
そんな中現れた、“あの子”。
僕は数日前まで隣で笑っていたあの子のいたベッドを見た。
本当は数か月前みたいだけど、僕にとっては数日前の出来事に思えた。
誰もいない、シーツが畳まれたベッド。
僕がこの病室にいない間、ここの病室には誰もいなかったんだ。
僕が意識を失う前、あの子はまだ足に包帯を巻いて座っていた。
僕がいない間、あの子は元気になって退院して行った。
…お別れも、言えないまま。
「…………っ」
何故か、涙が溢れた。
慣れない手つきで、流れる水を拭うけど、どんどんこぼれ落ちていく。
拭うだけじゃ止まらないから、僕は拭うのを止めた。
手で拭かれなくなった涙は、シーツにどんどんこぼれ落ちて行った。