告白よりも、ときめきを
…着いた。腕を掴みタクシーを降りた。
「大丈夫?歩ける?」
「…はい。大丈夫だと」
脇から腕を差し込み、背中を支えるように部屋に向かった。
「鍵、貸して?開けるわよ?」
「あ…はい」
渡された鍵を差し込みカチャカチャと開けドアを引いた。
「ベッドはどっち?」
「え…こっち、ですけど」
「じゃあ、お邪魔するわよ?」
「あ」
ゴトゴトとパンプスを脱ぎ捨て、片桐君の靴を脱がせ支えて運んだ。
寝室のドアを開け入った。
「ちょっと待って…はい」
ベッドの布団を捲り、コートと上着を脱がせ、横にならせた。
ズボンからベルトを抜き取り、靴下を脱がせた。
「ぁ……」
「…ん?」
「…いえ、何でもありません、すいません」
「薬、常備薬はある?」
「え?…無い、無いです」
「でしょうね…。近くにコンビニと薬局もあったわね。寄れば良かった...ちょっと行って来るから。
鍵、借りるわよ?取り敢えず寝てて、ね?さっきの薬が効いてくるといいんだけど」
「…あ、は、い」
はぁ、…明璃さん…なんて…。男前過ぎます。はぁ…。
カ、チャ。ただいま…。
片桐君…、寝てるみたいね。
このまま眠れるといいけど。
ちょっと熱、計らせてね。
買ってきた体温計をそっと挟む。額に触れてみる。
ピピッ。シーッ。37.8度か…、解熱剤が効いて来てるかも。
ふぅ、ちょっと、洗面所借りますよ。タオルも借りるからね。
タオルをお湯で濡らし固く絞った。
顔や首筋、胸元の辺りの汗を拭き、更に手を拭き、足を拭いた。ん…少しはさっぱりしたかしら。
額にシートを貼る。…フ、不謹慎だけど、何だか可愛いと思ってしまった。
サイドテーブルにスポーツドリンク、薬を置いた。脱がせた上着から携帯を取り出し、それも置いた。
メモ書きをした。
薬を飲んでいい時間。鍵はドアポストに落としておく事。
レトルトのお粥を買ってある事。
後片付けをした。
じゃあ帰るとしますか…。
ごめんね、ガサツに面倒見ちゃって。…おやすみ。
そんな独り言を呟きながら部屋を後にした。
鍵を掛け、ドアポストに落とした。
「はぁぁ……明璃さん。…おやすみなさい…」