告白よりも、ときめきを
・負かされたⅠ


ブー、ブー、…。

「はい」

「もしもし宇佐美さん?遅くなりました。今から出ます」

「はい、解りました」

まだ社内に居るんだ。
宇佐美って言われると、また変にドキッとしてしまうから不思議。
何だか電話貰ってから、急に現実味を帯びてきて、妙に緊張して来たんだけど。……メールで良かったんじゃない?
んー、まあ、取り敢えず平常心。平常心。



「宇佐美さん」

片桐君が軽く手をあげて入って来た。

目立つ!周りが軽くざわつくじゃないか…。この無自覚君は、もう…。
そーっと来なさいよね、そーっと。

「ごめんね、駅前まで」

「いいえ、配慮してくれたんですよね?」

まあ、そうだけど…。

「食べたい物はありますか?」

「ん〜、消化の良い物かな」

「……解りました。じゃあ、取り敢えず出ましょうか」

さりげなく手を取り、腰の辺りに手を回された。え、エスコート、なの…?…え?。

何だか視線が痛い。この女がこの男前の連れなのか?そんな目で見られてる気がしてならない…。
気にしない気にしない。気にしても仕方が無い。

「少し歩きますけど、大丈夫ですか?」

「平気、大丈夫よ?歩くの好きだから」

何も深く考える事もなく、返事をした。



「片桐君…」

「はい?」

「…もしかして、ここ?」

見上げて指を指した。

「はい」

「……」

「嫌いですか?中華」

「ううん、大好きよ。でも…」

「鳳来飯店です。会社の正面の」

「…」

それは解ってる、解ってるけど…。

「さあ、入りましょう」

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