告白よりも、ときめきを
・無自覚は罪
「只今戻りました」
「お疲れ様ですー、片桐さん!」
彼の言葉に反応して“若い”女子社員の殆どが労いの声を掛ける。
これはいつもの事だ。
……え?…ぇえ?どうしたの?
その彼が、…どういう事だろうか。女子社員の視線を連れたままこっちに来てる。
スーッとデスクの側に寄って屈み込み、座っている私と目の高さを同じにした。…?
「ばっちりでした。有り難うございました。本っ当、…感謝してます。資料、助かりました」
口元に手を当て、少し小声で言われた。…あ、あぁ、その件なのね。大した事ではない。
「そんな…、別にお礼はいいから。役に立てたのなら良かった。仕事なんだから気にしないで?」
「いや、本当、有り難うございました」
外回りから帰社したこの男。
入社八年目。任される取り引き先も多く“出来る男”になった。
あまり率先して言いたくは無いが、見た目も“出来た男”である。
身長は高いし…、整った顔は爽やかを通り越して涼しい?くらい。
世に何%くらい生息しているのか…稀少種。
そう、イケメン種族なんです。
後輩女子社員は、彼の一挙一動をいつも目を輝かせながら見ている。
中には祈りの様に指を組み合わせ、パチパチ高速瞬きをして見つめる者も…。
だから、彼の今の無自覚な行動は、罪の無い人間を有罪にしてしまうのだ。
幸い?私は女子社員の中で一番年上で(つまりお局らしいが…)、彼に関心が無いと思われているから、何のお咎めもない。
「ところで、もう大丈夫になったの?」
「はい、バッチリです」
「そう?本当に?無理してない?」
「はい、全然」
「ゔ~ん…感心する。回復早いのね~。まるでドラマのイケメン俳優並じゃな~い」
「え?何です?それ」
「…そうねぇ。…無敵って事かなぁ」
「ハハハッ。無敵?俺、女の人が見るようなドラマ見ないんで、よく解らないけど…」