告白よりも、ときめきを

「明璃…、なんでだ…」

唇が耳を掠めて声がした。息がかかった。

「…なんで片桐がここから出て行ったんだ?…」

「え」

「…さっきだ。近くまで来てたから、片桐が部屋から出て行くのが見えたんだ」

「え?あ…あのね、誤解しないで聞いて欲しいんだけど。送ってくれて、ちょっと玄関口に入る事になっただけなのよね」

「…なんで?」

「なんでって…。なんでそうなったかは、まず昨日の夜の話からしないと、説明できない」

「説明して」

「このまま?」

「このまま」

「このままは無理。長くなるから」

「じゃあ、上がる」

抱きしめていた体を離すと靴を脱ぎ、勝手知ったるわが家のようにリビングに向かった。

「え、ちょっと、待って」

振り向いた。

「あ、先に言っとく、俺の元々の用。
今度、同期会しようって事になってる。記念すべき10年だからって。
同期会って言っても、会社に居るのは男ばっかりで、明璃だけだもんな、残ってる女子。
だから、嫌じゃ無かったら、寿退社した子も呼んだらって、幹事の山崎が言ってた。
理由付けて騒ぎたいだけなんだよな、結局」

「同期会?美咲達が来られるなら、その方が私もいいかな」

「じゃあ、山崎にそう言っとくよ。という事で、この話は終わりだ。
さて…、それでだ。さっきの続きを聞こうか」

「あ、うん、解った」
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