告白よりも、ときめきを
私は今、休憩室に居る。遅くなった休憩をとっていた。決して、視線から逃げて来た訳ではない。そうしていい時間だ…。
そして、何となく片桐君と一緒になってしまっていた。
また…、この二人きりのシチュエーションというのは…偶然とはいえ、大丈夫なのか。
後輩女子達が少し気になるところではあるけど…。
「あのね、王道の恋愛物には、女の子の夢や希望がふんだんに盛り込まれているのよ。だから、当然、主人公は容姿も含め、無敵の設定なの」
「あ、さっきの話ですか?そんなもんですか…それ、面白いんですかね」
買って帰っていたのか、缶コーヒーを口にしていた。ここには無いメーカーの物だ。
「面白いっていうか、そんなもんだと思うよ?主人公はなんっでも、出来ちゃうし。ドキドキすること、こんな風だったらいいなっていうこと、してくれる設定?フフ。ドラマで擬似恋愛する女の子も居るくらいなんだから。有り得ない事が、あったらいいなぁって、思っちゃうのよね、多分。
って、こんな話。片桐君に語ってどうするのよね。観ないくらいだもの、全く興味も無いでしょうからね」
「え?ハハハッ。明璃さん、一人のりツッコミですね」
…ドキッ。…この男。今となっては明確には解らないが、いつの頃からか、職務室を離れると、何故だか私を下の名前で呼ぶようになった。…明璃さんなんて呼んで、…不用意にドキドキさせないでよね。
あれ…?話、なんだっけ…余計な事考えてるから、あ、そうよ。
「熱は?もう無いの?」
…?
片手に缶コーヒーを持ったまま、黙ってこっちに顔を出してきた。
…何?私におでこに触れって事?なら、…遠慮なく触ってみるか。
ピタッて、掌を当ててみた。
「ん~、よく解らないけど…無さそうね」
「はい…平熱になりました。今朝ちゃんと体温計で計りましたから、間違いないです」
「よく下がったわね?あんなに熱かったのに…」
「薬もですが、まあ、気合いと根性と、……圧倒的な思いやり?」
「ん?圧倒的な思いやり?」
「はい。圧倒的なです」
圧倒的…ふ~ん…そうか…なるほどね。あれから連絡取って彼女に看病して貰ったのね。
大っぴらにはしてないけど、…居るんだ。
あの子達、知ったら嘸かしショックだろうな…。
私、ズカズカ部屋に侵入したけど、大丈夫だったかな…。