告白よりも、ときめきを
・負かされたⅡ
「明璃さーん」
ドキッ。
「…片桐君」
何か急用かな、急いでるようだし。
「ハァハァ、今…、ハァ、帰りですか?」
「どうしたの?そんなに走って」
「ま、窓から見えたんで、…慌てちゃって、ハァ…追いかけなきゃと思って。…運動不足ですね。ハハハ。
…思ったほど走れない。ハァ」
いや、貴方のちょっと汗を流した今の姿、女子は堪らんのじゃないかしら。
「大丈夫?私は帰りよ。それで、何?用?」
私はこの子に、大丈夫?ばかり言ってるみたい。あと、ちょっとごめんね、と。
「時間ありますか?」
…何だか…仕事の事ではないみたい。
最近解った。用件を後にして聞く聞き方は上手い手段だ。
「無いと言ったら?」
用件が何だか知らないけど、諦めるかしら。
「時間があるのは知ってますよ。時間はいつもあるって、この前の御飯の誘いの時、言ってましたから」
最初から意味ない返事だったのね…。じゃあ時間ありますかって聞く方も聞く方じゃない?まあ、決まり文句のようなものよね。解ってても決めつけた事は言わないものよね。
「よ、用件は、何?」
「はい、俺に、明璃さんの時間をください」
ドキッ、…何、今の言い方。…フゥ。無防備に鷲掴みされるんですけど。
「映画行きましょう。チケットあるんで。…さあ」
「え、ちょっと、今から?」
ドキッ。いきなり手を繋がれて歩き出された。何、この強引さ…。
「そうですよ。明璃さんも好きだと思いますよ?シリーズ物のファイナルですから」
きっと公開直後のあの映画の事だ。正直、観たかった。観たいと思っていた。
やるな、片桐君。…でも。
「…いいの?私と」
「いいから誘ってるんですよ。明璃さんと行きたいんです」
ドキッ、うっ、何それ。まるでドラマじゃない…。ドキドキが止まらない…。