告白よりも、ときめきを

あ。……は?え?
これでは周りのカップル以上じゃないの?
どこかにカップルに対する注意書きとか…、あるんじゃないの?
ちょっと…何してくれてるのよ……。隙ですって?
お、お水…、小さいペットボトルのでも忍ばせておけば良かった…。はぁ。心臓が煩い。
そうだ、隙を見せた私が悪い。


あんな後で平然と余裕をかまして、さあ、御飯行きましょう、なんて言う隣のこの男前。

もう、ドキドキの許容範囲が…キャパ、オーバーしそうなのに。
この先数ヶ月はドキドキは要らないくらい。もう。…はぁ。


「片桐君あのね…」

「あー、拓実でいいですよ?俺も明璃さんて呼んでますし、ま、許可無く勝手にですけど。
遅いから軽めがいいですよね、御飯」

「えっ、あ、そ、そうね」

…。

「何かリクエストは?有りますか?」

「えっ?ごめん、特に浮かばない。任せるから」

今、御飯とか何か考える余裕は全然無い。…知ってるんじゃないの?

「んじゃ、俺が決めたとこでいいですか?
創作料理…、和食中心の店で、サラサラッと食べられる雑炊とかあるんで、そんなのはどうです?」

「え、あ、はい、特に異論はないです」

「明璃さん?知ってます?」

「?」

「フ。明璃さんは不自然に敬語使う時があるんですよ。心が二つある時」

「え?」

心が二つ?

「冷静な心を残しつつ、他の事…厄介な事を考えて心が揺れてる時」

そんな事、考えてみた事ない。つまり、動揺しているって事だ。
ちょっと待って。…既にグチャグチャになりそう。
こうなると、次の言葉遣いが慎重になるではないか。

慣れた言葉遣いになるのか、敬語になってしまうのか。不意に出る自分の口が怖い…。
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