告白よりも、ときめきを
「迂闊に喋れなくなったんでしょ。心が読まれそうで」

うっ、片桐君の策略なの?
もしかしたら、それ程でもないのに、わざと言ってるだけなのかも知れない。
どっちに取ればいいかしら。


「明璃さん、着きましたよ。さあ、入ってください」

ドアを開けられた。

「…有り難う」

これは、普通の言葉よね。


それぞれのテーブルが充分な間隔を取ってあり、テーブルには控えめなスポットの明かりだけが落ちていて、落ち着いたシックな造りのお店だった。
思わず、素敵なお店ね、と言っていた。

鯛の天茶漬けも美味しいですよ、と店員さんが言ってメニューを渡してくれた。

ん~、雑炊とどちらも捨て難い。
一緒にセットする単品の惣菜を三つ選択出来る。沢山あって、あれもこれも食べたくなってしまう。見れば見る程迷ってしまう。

「迷われるようならオススメセット…こちらもあります。まずこちらで試されてみるのも良いかと」

メニューを裏返し、手で指し示された。なるほど…そこに気がつかなかった。

「では……鯛の天茶漬けの、このセットで」

「俺は鮭雑炊のAで」

「畏まりました」

「ごめんね、迷い過ぎて」

「いいえ、どれも旨いです。俺も定着するまで、色々、組み合わせに迷いましたから。
本気で食べたい証拠です。だから迷いますよね」

「…ごめん」

どうも食べる事に関しては、中華に行ってから食いしん坊だと思われてしまったようね。

「落ち着く感じ…、また来たくなるお店ね」

「では、また誘いますよ…」

「え」

ドキッ。テーブルの上で指を組み、余裕の表情と返事だ。
なんなのよ、今の。…これって。ライトのせいかな。
今日はずっと押されっぱなしだ…。
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