告白よりも、ときめきを
お待たせしましたと持って来られたセットは、上品な味付けで、出汁や素材の味や香りをとても感じる物だった。
ホッとする味…美味しい。遅い夜にはぴったりかも知れない。
「ご馳走様でした」
「有難うございました。よろしかったら、またいらしてください。
有難うございました」
今回はキッチリそれぞれの会計をした。
駅に向かいながら、話し掛けた。
言っておかないと、と思ったからだ。
「片桐君。この前の事…。好きだと言われた事なんだけど。
…ごめんなさい、私は応えられないから。片桐君だからというより……私、恋愛しないから。
それに貴方…何度も言うけど、彼女いるんでしょ?」
首を横に振りながら言葉が返って来た。
「論外だと言ってます。…語るに値しない。初めから…彼女なんて居ないですよ」
?!。どういう事?私の思い込み?でも、あの時のあの言い方は居るように聞こえたし。
否定に取りにくいじゃない…。わざと思い込まされたのかな。単純な早とちり?…。
「と、とにかく、気持ちには応えられない、そういう事です。だから」
キスとか、困る。そう、困るのよ。
「動揺ですか?それとも、自分の気持ちに気付かない事にして、隠し込もうとしてますか?」
「ど、どういう事?」
隠すことなんて何も…無いわよ。だって…。
「…さあ、明璃さんの気持ちは明璃さんにしか解りませんから。俺は…好きだから少しでも気持ちを向けて欲しいだけです。送ります、帰りましょう」
「いいえ、一人で帰れます。一人で大丈夫です。どこでだって何も起こらないから、大丈夫。帰れます。おやすみなさい」
「あ…はぁ、そんなに警戒しないでください。
残念ですね…では、おやすみなさい。くれぐれも、気をつけてくださいね」
「大丈夫だから…」