告白よりも、ときめきを
「怖いだろうが。おい、どうした…、痴話喧嘩か?」
山崎君が来て間に入った。
「痴話でも喧嘩でもありません。ただのいざこざです」
「いざこざも喧嘩だろ?宇佐美?俺、山崎だって解ってる?」
「解ってます!」
「こぉ…凄い剣幕だし…、それに何、その敬語。初めの頃以来じゃないか?で、なんで、いざこざ?」
「ん、あぁ…、まあ、ちょっとな…」
「何何、竹内。歯切れ悪いじゃん」
「片桐君が竹内君に…、私と映画に行った事、御飯を一緒にした事を言って来たって」
「あ、おい!明璃…」
「…へえー」
俺は竹内と目を合わせた。
「ふ~ん…つまり片桐は、お前を敵だと判断した訳だ」
…片桐の奴、俺はライバルにはならないと踏んだな。
「…さあ」
「で?」
「何に対して、で、だ」
「いや、いい。答えるな」
「答えるも何も、解らん」
「まあ、どの道、会社の休憩室で休憩中に話せる事では無い、だろ?」
「…」
一輝は小声で話し掛けてきた。
「まあ、片桐の態度は…入社直後から解りやすい奴だから…。課の男ならみんな勘づいてるよな」
「そうか?」
俺は鈍い振りをしておいた。
「えー、一輝はそんな事に鋭いの?」
けっ、…当たり前だろうが。
「おお、明璃、話し方戻ったな」
「あ、ほんとだ」
一輝が来たから和んだんだよ、多分。
「とにかく、ここはアレだ…。壁に耳あり障子に目あり、状態だ」
言い終わるなり、一輝がドアをバッと開けると、キヤッという声と同時に後輩女子社員数名が雪崩込んで来た。
流石、男前二大巨頭の存在。
二人が居る休憩室は、余程気になったらしい。
あっという間だ。
キャーと声をあげ、蜘蛛の子を散らしたように居なくなった。