告白よりも、ときめきを

「本当なのか。その…、キスされたって言ったけど」

「うん。そこまでに至った事、始めから話すとね、残業してる時、片桐君が帰って来て、具合悪いのに書類作らなくちゃいけないって言うから、私が代わりに作って、あ、片桐君はその間、会議室で薬飲んで寝ててもらってたのね。それで、出来た書類を確認して貰って大丈夫だったから、…それから家に送って行って、寝かせて帰って来た、って感じだったと思う」

その時されたのか…会社でか、片桐の部屋でか。

「具合悪いって、なんで解った?」

優と同じような事聞くのね。

「汗も出てたし、熱も、かなりあったと思う、熱かったから」

熱かった?………唇がか。…ぁあ?違う、それは、ん?

「計ったのか?」

……。

何だよ、今更沈黙って。計る為にキスになったのか?偶然当たったのか?だから淡々と言えたのか。…あっ、そうか、事故だったのか。

「…手をおでこに当ててだけど」

手?…手だったのか。まあ、それが普通だな。

「そ、そうか。何故、その…キスに発展したんだ?」

俺、そればっかり気にしてるな。熱とは別でって、なるよな…。ガバッと襲われたのか…きっとそうだ。病人だと油断してたんじゃないのか。

「襲わ…」

「キスはその日じゃないのよ」

「れたんじゃ、…あ?」

「片桐君が、ずっと好きだったって、入社してから。そんな俺に…おでこ触ったり、服のボタン外したり、誘惑してるようなものだって。書類のお礼だって、次の日御飯に行って、帰り送るって言われて…このくらいは許してくださいって……された」

なっ!!…片桐の奴ー…。

「…明璃。なんでだ?」

「え」

「なんで、そんな隙を作ってる?…片桐が好きなのか?それなら別に…ただの惚気話とも取れるけど」

どうなんだ。首を振っている。

「私だってびっくりしたんだよ。好きだとは…そんな風には思って無い、そんなのは思ってなかった」
< 48 / 69 >

この作品をシェア

pagetop