告白よりも、ときめきを
お礼に御飯をと誘われた理由。
それは昨日の夜の事だ。
私は年の功?
課長に頼まれた書類を残って仕上げていた。明日の朝一に欲しいという物だった。
内容の確認は済んでいて、後は打ち直すだけ。量はあったけど、残業というほどの気の重さは感じなかった。
後輩は当たり前だが、定時に上がっていたから、この島に居るのは私だけだった。
男性社員も、お先に、と声を掛けて、一人、二人と帰って行った。
「宇佐美、珍しいな、残業か」
そんな中、同期の竹内優が声を掛けて来た。
「あぁ…竹内君〜」
10年来の同期のよしみで、普段は優、明璃、と呼び合っているが、流石にオフィスでは名字呼びだ。
「ミスったとかじゃないのよ?これ…、課長ったらね、頼むって言って帰ってったのよ?
どうしても外せない接待があるんだって。別にどうでもいいんだけどね、理由は」
座ったまま椅子をクルリと廻し、摘まんだボールペンを揺らしながら少し愚痴った。
「まあ、他の誰かに頼むより、宇佐美なら確かだからだろ。頼みやすいのもあるし。任せといて心配無いから、仕方ないっちゃ仕方ないさ。間違わずに打ち込むのも大変だよな」
「そう!それ。作って確認もまたキッチリしとかないと…やった意味なくなっちゃうのにって話」
「フ。そうだな。あ、これ、やるよ」
ポケットに手を入れ何やら取り出した。手を取り渡された物は箱入りのチョコだった。
「あ!チョコ」
「フ。…それから…これも」
もう片方からブラックコーヒー。ボールペンをデスクに置かれ、握るように持たされた。
「どうだ、最強だろ?」
両手を見た。確かに。この組み合わせは好きなのだ。
「最強!竹内君って、某、青いロボット?有り難う、嬉しい…。頑張る!」
デスクに置いた。
「じゃあ、俺は、ど〇で〇ドアで帰るとするか?一瞬だな、ハハハッ。…悪いな、先に上がって。ま、頑張れよな。あ、気をつけて帰れよ?」
「大丈夫、そんなにかからないと思うから」
バシッと背中を叩かれた。
アタタッ。力加減をしなさいよね、もう…。でもこういうの有り難い。
早速チョコを開け、有り難く一粒ほおばった。