告白よりも、ときめきを
小振りに作ってあるスイーツとは言え、…明璃には驚かされる。
色んな種類を一、二、三…八個。皿から溢れ落ちそうだ。しかも、あんな話の後で。
食べ物同様…別物か。女は切替が早いのか…。これはこれ、あれはあれ、か。
それとも、最初から自分で解ってた事だから、俺に嫌な部分を指摘されて尚更すっきりしたのか…。
紅茶もしっかり入れて来ている。
休憩室での雰囲気…。二人に何かあったのは間違いないと思ってる。別に明璃から聞かなくてもいい。聞いたら話すかな…竹内。あいつから直接聞くか…。
「あのね、…優がね」
あー…話すつもりなのか?
んー、いざとなったら、聞きたいような、聞きたく無いような…。
しかし、明璃はどういう心境で話そうとする?…竹内に気が無いからか?ケーキを頬張りながら言えることなのか…。
「片桐君が帰った後、直ぐうちに来たの。あ、キスされた場所は、うちだったから」
は?…。また、その事、そこまで言わなくていいんだが。直ぐって、竹内は、なんで近くに居たんだ…。
「仕事帰りに、同期会の話を伝えに来たらしいんだけど」
それは、そんな訳無い、そんなものは会社でも、メールでも、電話でも済む。そもそも行かなきゃいけない何かが元々あったんだ。
「それでうちから片桐君が出て行くのが見えたからって」
なんか前後してるな。それって片桐が来てるかもと思って、明璃んちに行ってたって事だろう…。
「それで、居ない事が違和感だとか、なんか色々言われて、…好きなんだ、って…」
なにー?
…冷静に、冷静に聞けよ、俺。
「あいつは、明璃が好きだって言ったのか?」
「うん、…キスもされた。相殺だって…片桐君の。それで、俺の事、真面目に考えてくれって」
…相殺、てか。…あいつも明璃と…したのか。…聞いてないぞ…。
「……」
…知らなかった。知らなかったぞ、片桐…。別に、狡いとか、そんな事じゃない。…そうは思わないさ。いつかは、そろそろあっていい話だ。好きだってちゃんという事もだ。
俺は聞くんじゃ無かったと後悔した。
それから、そんな大事な事をケーキを食べながら淡々と話す明璃がよく解らなかった…。