告白よりも、ときめきを
・仕切り直し
ん?ちょっとしたざわつきの余韻みたいな、何だ?この何とも言えない雰囲気は…。
いつもと違う違和感を感じた。
外から戻った俺は奥田に声を掛けてみた。
「なあ、何か変じゃないか?何かあったのか?」
「おお、…ちょっと、驚かされたよ。山崎がな」
そういえば、あいつ、居ないな。
「あいつ、仕事でちょんぼでもしたのか?」
「いや、全然違う、仕事じゃない。いきなり、宇佐美の、手を取ってだな…」
「は?何だって?」
明璃の手?
「宇佐美の手だよ。自慢気な顔して、攫うように帰ったんだ、こんな風に」
俺の手を取りギュッと握るとニッと笑った。
「はぁあ?帰った?あいつ、仕事は?あ、もういい、離せ」
「フ、ああ。
黙々とやって、ちゃんと終わらせてるようだぞ」
「…そうか…珍しい」
計画的だったか…そうだよな。
大方この間の休憩室の話だよな、あのままでは気になる。あれの確認だ…。
「いや〜、それにしても、びーっくりしたよ。
今はもうみんな帰ってるけどさ、女子社員なんか、まだ居たから、みんな、声にならない悲鳴あげてさ。繋いでる手、凝視してたぜ。
しかし、何がどうしたんだ?急にあんな事して。わざわざするなんて、可笑しいくらいの事だよな」
「ああ、まあ、不自然だよな」
「そう。不自然だよ。別に普通に二人で出たらいいのにさ。今更、見せ付けるような事してさ。俺には出来ないね~。後、大変そうじゃん、完璧噂立つし」
「…そうだな」
それだよ。それを狙ったんだ。
「…そうか。噂にしたかったのかも」
「…お前も鋭いな」
「当たり前だろ?顔は十人並みでも男心はお前らと同じだ…。山崎の奴、焦ったかな~」
「ぁあ?何を焦る」
小声で囁かれた。
「片桐だよ、片桐の存在にだ」