告白よりも、ときめきを
やれやれ、と。入力は終わった。…間違いも、ない。さ〜て、後はプリントアウトするだけ、と…。これで帰れる。
デスクを片付けながら印刷が終わるのを待っていた。
「ふぅ…、お疲れ様です…」
「え?お疲れ様…あれ?、片桐君。今戻ったの?」
遅くなったのね。
「まあ…はい、ちょっと前に。…取り引き先で長くなっちゃって…。
…帰っては来てたんですけど、…そこで…暫く休んでました」
「そうなの?確か訪問先の担当さん、片桐君の事お気に入りじゃなかった〜?だからか、…大変ね、好意的な女性が相手だと」
「…話が脱線して…いつもの事なんですけど…中々終わらなくて…もうちょっと、ああいうのは流石にきついですね。…ふぅ」
鞄を置き、デスクの椅子を引いて腰掛けたが、片桐君は妙に脱力していた。話す言葉も途切れ途切れで声に力が無い気がした。
「ご愁傷様。ねえ?ちょっと、片桐君?疲れてるだけ?…具合、悪いんじゃない?汗が出てるんじゃ…」
「あー…大丈夫です。…俺、まだ明日の資料、仕上がってないし、…やらないと…」
「待って。ごめん、ちょっと触るわよ?」
「え?…ぁ」
ここに体温計なんて無いから、おでこに手を当ててみた。
…熱い。かなり熱があると思う。それに汗。これってただの風邪だろうか…。もうみんな上がってしまって、私と片桐君しか居ない。
すぐ隣の会議室の明かりを点けた。
「片桐君、取り敢えずこっちに移動するわよ。歩ける?」
「え?あ」
戸惑っている片桐君に肩を貸しながら立ち上がらせ、よろよろと何とか歩かせて、ソファーに座らせた。
はぁ、歩くのも辛いくらいになってるのに…よく会社まで帰って来れたものだ。まあ、戻ったらそれで安心して弱るって感じかな…。
「早い時間から怠かったんじゃないの?無理したんでしょ。ここに居て?寒いでしょ?ちょっと待っててね。あ、横になってて、ね?」
返事も待たず、ロッカーへ走った。
置いてある膝掛けと、解熱剤、ドリンク剤を手に急いで戻った。
「飲み合わせが体にいいかどうかは解らないけど、熱が出た時、私、いつもこうして飲んでるから、飲んでみて?アレルギーは無いよね?」
解熱剤とドリンク剤を飲みなさい的に強引に渡した。