告白よりも、ときめきを
「うん、解った。でも、人それぞれなんでしょ?」

「あ、あぁ…」

「じゃあ、それぞれの中の、私は私でしょ?」

「…あ…、明、璃…」

思わず情けない声が出た。
突然始まった明璃の恋は、貪欲というのか、想いが堰を切ってしまったようだ。
俺は今、明璃に押し倒されていた。

ん、んん…。
…唇を奪われた。
ふ、んん、ん…甘い…。まずいぞ…ウマイ。

「……優…」

なーーっ!そんな顔で俺を見詰めるな。はぁ。
た、堪えるんだ、俺。シナイ!今日はシナイ!!
さっき決めたんだ。大事にするって。

んなーーっ!…止めろ。ネクタイを解かれ、シャツのボタンに手が掛かった。
もう、止めろー!明璃ー。

「スス、ストップ!ストーップ…ハァハァ」

「…」

「…明璃」

目の前にある明璃の顔に手を伸ばして頬に触れた。

「優…、嫌い?私の事…」

そんな、寂しそうな顔をして見るな…。

「違う!違う明璃。…違うんだ。嫌いじゃない、好きなんだ。言ってるだろ?だから…」

俺は押し倒されてる床から身を起こしながら、明璃を抱きしめた。

「明璃…、大事にしたい俺の気持ちを解って欲しいんだ。俺達は始まったばかりじゃないか。
一緒に過ごした、今までの10年とは違うんだ。明璃の気持ち、今までと違うんだ。そうだろ?そう思わないか?変わらないものもある。同期としての気持ちと、新しく芽生えた気持ちだ。
そりゃあ、俺はずっと好きだったから…男だし…いつか、こうなりたいと、願ってる部分は少なからずある。……いや、大いにある。あるんだ。
でもな…、大事だから流されたくない、勢いづくでしたくないんだよ。
ずっと想いも行為も待ったんだ。な?明璃」
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