告白よりも、ときめきを
その日僕は、取引先での商談をまとめ、帰社する途中、某コーヒーショップに立ち寄りました。
ご褒美を兼ねた、ちょっとした息抜きです。
はぁ、こんな事なら会社に帰って自販機のコーヒーで手を打った方が良かった…。
入店して後悔しました。
世に言う、午後のお茶の時間です。
僕みたいなのもちらほら居るには居ましたが、殆どがケーキを頬張りながら話に夢中な方々ばかりでした。
僕はもう右手に大きいサイズのコップを手にしていました。
歩きながらは飲みたくない。
2階に上がりキョロキョロしながら見渡すと、ラッキー!窓に面した端の席が空いていました。
僕はそこに座る事にしました。
席に着こうとした時、隣の席の女の子が立ち上がりました。
予測していない事には対処出来ないものです。コーヒーと鞄で手は塞がっています。
僕等は想像通りぶつかりました。彼女のほぼ空になっていたコップから、僅かな滴が飛び、僕の眼鏡を汚しました。
「あっ、ごめんなさい」
慌てて彼女は紙ナプキンを差し出してくれました。
「いや、僕も注意が足りませんでした、大丈夫です」
取り敢えずコーヒーと鞄を置き、眼鏡を綺麗にしなくてはと、差し出してくれた紙ナプキンを、有難う、と言って受け取りました。
そして眼鏡を外して拭き、更に鞄から眼鏡拭きを出して拭いていました。
「あ、あの…いきなりごめんなさい。彼女さんは居ますか?」
と聞かれた。
「いいえ、居ませ…」
言い終わらないうちに
「私とつき合ってください」
と言って来ました。