告白よりも、ときめきを


肘を付き上半身をゆるゆると起こすと、首を振って頬をパシパシと叩いた。

「…ふぅ、見ます。貸してもらえますか?」

ジッと見て、一枚、また一枚とめくっていく。

「…有り難うございます。完璧です」

「本当?良かった。じゃあ帰るわよ?」

「え、ぇええっ」

膝掛けを畳んでテーブルに置き、椅子に掛けてあった片桐君の上着を取ってきて、後ろから着せた。

「あ…」

「ん?さあ、オフィスの荷物!歩ける?」

「あ、…はい」

膝掛けを持ち、立ち上がった片桐君の背中を押して退室する。

会議室の明かりを消し、オフィスのデスクを片付け、優から貰ったチョコをバッグにしまった。

…よし。

「関節、痛くない?大丈夫?帰ろう?」

片桐君を連れ立ってオフィスを出た。


エレベーターに並んで乗り、下がっていく数字を見詰めていた。

片桐君は辛いのだろう、後ろの壁にもたれている。
しんどそうね‥。

「片桐君…ごめん、触るわよ?」

「え…ぁ」

手では不確かなのは解っていたが、また額に手を当ててみた。

「当たり前だけど、まだ全然、熱いわね」

顔もほんのり赤い。

「…」


チン。

「大丈夫?タクシーで送るから。もう少しの辛抱よ」

「…」


通りに出てタクシーを拾い、片桐君を押し込んだ。

「行き先。住所、伝えて?」

「あ…あぁ、すいません。〇〇迄、…お願いします」

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