HE IS A PET.


「見える」

 飼い主を待ち侘びる忠犬さながら。
 でも怜はハチ公みたいに強くはないから、一人きりで木枯らしに吹かれるような待ち方は出来ない。


「明日、アズミンのとこに一緒に行こう」


 怜とのわずかな距離に、静かな緊張が走る。
 エリックのいる場所に強制送還されると思ったのか、怜は怯えるように尋ねた。


「ここにいちゃ、駄目?」

「駄目じゃないよ。言ったでしょ。怜がいたいなら、ずっといていいって。でも怜は、アズミンのとこに帰りたいんでしょ? エリックがいるから、帰れないだけで」

 正論で導けば、やるべきことなんて分かり切っているのに。


「私が出来ることは協力するから。怜も勇気出して、アズミンにぶつかってみなよ。怖がってちゃ駄目だよ」


 自分のことを棚に上げた。勇気がないのは私だ。

 顔を覗き込むと怜は静かに泣いていて、触れると震えているのが分かった。

 スウェットのポケットの中で、スマホが震えている。

 こんな夜分に怜のスマホを鳴らす相手は、一人しかいない。


「アズミンだよ、電話。出て」




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