HE IS A PET.


「今からキャンセルしてもキャンセル料がかかるから、それだったらお前に譲ってやるって言われてさ。先月そいつに会った時に、倉橋さんの話しちゃったもんだから」


「私の話?」


「うん。こっちに好きな娘出来たって」


 えーと……

 薄々気付いてたと言えば、気付いてたけど。まさか今日告白されるとは思わなかった。

 予期せぬタイミングで投げられたストレートを、構えていなかった私は受け止められず、転がるボールの行方を目で追った。


「でも、脈が無いのは分かってるから。友達のままでいいと思ってるんだ。倉橋さんが楽しそうにしてる顔、見られるだけで満足だから」

 自分で投げたボールを先回りしてキャッチした守田さんは、息切れをすることもなく穏やかに微笑んだ。


「だから一緒に行かない? タダで行けてラッキー、くらいの気持ちでOKしてくれたら、嬉しいんだけど」


 守田さんは柔らかい物腰なのに、意外に押しが強い。
 私はサバサバした性格なくせに、実は押しに弱い。


 結局、クリスマイヴには守田さんと東京湾クルージングと洒落こむ予定となった。


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