HE IS A PET.


 ロマンティックな夜景を背に、怜が風になびかれていた。

 私の姿を確認すると、ふわりと控えめに微笑む。


「話って、なに」

 めちゃくちゃ避けてたくせに。
 不機嫌ぶって隣に並ぶと、怜は何故かコートを脱ぎ始めた。


「寒くない?」

 上着を羽織ってこなかった、私にかけるためだった。


「寒いけど。貸してくれたら怜が寒いでしょ。風邪引くよ」

 肩からかけてくれたコートは、軽くてあったかい。多分カシミヤだ。ファーはフォックスかな。
 天然だろう、手触りがいい。


「咲希さんが引くよりいい」

 相変わらず可愛いことを言ってくれる。天然で、たちが悪い。

 返そうとしたコートを、珍しく強引な手つきで私に羽織り直させる。

「咲希さんの、彼氏?」

「誰?」

「一緒にいる人」

「友達」

「友達とイヴにデート?」

 拗ねたような口調に驚いた。まさか嫉妬してるとか。



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