HE IS A PET.
「怜だって、戸田さんとイヴデートしてるじゃない」
嫌味っぽく言うと、怜は罰が悪そうな顔をした。
胸がズキリとした。
「もう下戻ろう。二人待たせてるし」
コートを脱いで、怜に羽織らせた。風邪を引かせたら、今度こそ私の責任だ。
「待って……咲希さん。この後は?」
「この後?」
「船降りた後……あの人と過ごすの?」
何を訊かれているのか、一瞬意味が分からなかった。
「クルージング終わったら、帰るよ。友達だもん」
私が誰と聖夜を過ごそうが、怜にとやかく言われる筋合いはない。
「じゃあ……俺と、落ち合わない?」
女装した怜に、「俺」という一人称はひどく不似合いだ。
チグハグな響きに戸惑う。
「電話して」
「戸田さんは? 一緒でしょ」
「戸田さんは、この後また別のパーティーに行く予定。俺は、ついてかないから」
「どうして?」
「仕事方面のパーティーだから。俺、場違いだし」
ああ、そっか。一人で留守番をするのが淋しいんだな。
怜は病的に淋しがり屋だから。誰かに側にいてほしいんだろう。
手を伸ばした先に丁度良く、私がいたというだけのこと。