HE IS A PET.
「あのさあ、ナンパされて困るなら、女装して出歩くのやめなよ。それとも男に口説かれるの、怜の趣味?」
「ごめん、帰って着替えてこようと思ったんだけど……咲希さんに、早く会いたくて」
ああジーザス。ここに天性の小悪魔がいます。
「あ、でも待って。ちょっと寄り道してもいい?」
何が「でも」なのか、「寄り道」以前にどこが目的地なのか。
怜の言葉は相変わらず拙くて、謎だらけだ。
駅前のコインロッカーに着くと、怜はその一つを開けて中から大きな紙袋を取り出した。
「着替え、ここにあったの思い出した」
「別にいーよ、わざわざ着替えなくても」
「でも、この格好してるとやっぱ喋りづらい。男って、認識されたいし」
そう言って、駅のトイレで着替えて化粧を落としてきたきた怜は、男は男でも『高校生』だった。
「何で制服なの?」
「学校あった日にここで着替えて、そのまま忘れてた」
「忘れてたって……」
ああ、そっか。高校はもう冬休みか。
制服を着ると余計に幼く見える怜だけれど、上にPコートを羽織っているからまだマシだ。
まんま制服姿で歩かれたら、まるで援交みたいだ。
見た目年齢、十七位の怜と。実年齢より若く見られることがない私。
特に今日は、大人っぽくドレスアップしている。怜より十は上に見えるかもしれない。